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「あなたは楽しんで生きていますか」進行性の疾患をかかえ力強くたくましく生きている海老原さんの言葉には説得力があります。

海老原宏美さんは、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型という障害をもって生まれました。この病気は、進行性で、いまは人工呼吸器をつけて地域での自立生活をしています。
彼女は、「人とのつながり」を何より大事にしていることが、本書の至る所からうかがえます。家族と、アテンダントと、仲間と、友人と、待ちゆく人と・・・。
家族に「あなたは大切な存在だ」と言われ、友人に「あなたと知り合えて良かった」と言われ、仲間に「あなたにいてもらわないと困る」と言われるような、そんな環境があれば、どんな障害をもっていても、その命がどんなに短くても、誕生した価値はあると思う、と強く述べています。
彼女は同時に、人をよく観察もしています。

進行性の疾患をもつ人は、大抵、「自分が自由に動ける期間はあとどのぐらいだろう」「いまやりたいことは、いまやっておかないといけない」と考えるものでしょう。彼女もしかり、で、時間を大事に有効に使おうといつもしています。
母親が、人間関係で愚痴ると「時間がもったいないね」。更年期障害でいろいろな症状を訴えると「五十歳まで生きられたから、味わえるんでしょう」という彼女。一つ一つに重みを感じるのは私だけでしょうか。

『まぁ、空気でも吸って 人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』海老原宏美・海老原けえ子著 現代書館より発売中

[執筆者]
太田啓子

[プロフィール]
立命館大学 衣笠総合研究機構 客員研究員。博士(学術)。専門は、障害者福祉、障害学。「職業訓練における指導員のジレンマ-職リハの取り組みを通して」横須賀 俊司, 松岡 克尚編著『障害者ソーシャルワークへのアプローチ―その構築と実践におけるジレンマ―』など執筆。