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国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、障害をもちながら地域生活する中で、よく思うことなどについて綴っています。電子…

シャルコー・マリー・トゥース病による手足の麻痺、という障害のある私は、日常生活をなんとか自力で行おうとすればするほど、様々な工夫に頼らざるをえない。手先の細かい動作が求められる時は、ゴムなどをつけて滑り止めにしたり、指先をつっこんで腕全体の力が伝わるようにリングなどの輪っかをつけたり。実に毎日が涙ぐましい努力の連続なのである。
以前患者会でそんな毎日の工夫あるある話をしていたとき、私同様にキャップを開けるのに歯を使う人が結構いて、歯磨き粉のチューブやペットボトルのキャップなんかは歯型がついている、というので、とても印象的なエピソードだとよく覚えている。

そして、患者会で出会う多くの人は、移動手段として車に乗っていて、手動式のアクセルブレーキに改造している人もいる。私もそんな一人で、私の車は太郎という愛称までつけている。
現在の太郎は、4代目である。車いすを使いだしてもう10年ちょっとになるが、数年前までは自分で車いすを太郎の後部座席に載せていた。それが、病気の進行もあって、車いすを自分で積み込むことができなくなって、誰か人にいれてもらわないといけなくなった。個人的な用事であったとしても家族などに一緒に車に乗っていってもらうか、行った先で誰かに待っておいてもらわないといけなかった。いつも一人で自由にふらっと、運転を楽しんでいた私としては、いろいろな意味で気を使わないといけないことが一気に増えてしまったのだ。

そんなときにバリアフリー展でたまたま見つけたのが、車いす格納装置のオートボックスだった。オートボックスにいれるために、オーダーメイドの小さな車いすに乗り換え、半年以上もかかってやっとオートボックスをつけた4代目太郎を購入したのが、いまから1年半前のことだ。


このオートボックスに車いすがモーターで吊り上げられて、ぴったりと格納されていく様子は、大の大人でも目が釘付けになっていて、私はその驚いて目を見開いている様子を実はいつも誇らしげに楽しんでいるのである。

4代目太郎に乗って初めて挑戦したこと。それはずっとやってみたかった一人旅だった。オートボックスという魔法の箱をゲットしたおかげで、私は移動の自由を再び手に入れた。日帰りだったけれど、行ったことのなかった舞鶴と天橋立へ。珍しいぐらいの快晴の日本海。お寿司屋さんで特上握りを日頃頑張っている自分へのご褒美に。ドライブを楽しみ、途中ふらっと立ち寄った宮津港からお隣の天橋立をぼんやり眺めて。気ままに過ごせてとても贅沢な時間だったし、大きな自信にもなった。

昨年末に難病患者仲間と2人で起業した旅行会社『櫻スタートラベル』。私と同じように、「やってみたらできた!」「自信になった!」といってもらえるようにサポートができる旅行会社でもありたいと思っている。

[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。