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15年前にスタートした「ケアする人のケア」の研究事業。立ち上げ当初に出会った二人がそれぞれの気づきや成長を語り合うコラム。 利用者…

奈良の森口さんへ

北海道の中村です。
年が明けてあっという間に2月になってしまいました。前回森口さんがおっしゃっていた通り季刊コラムになってきていますね。のんびりとお付き合いいただければ嬉しいです。

高齢者住宅のスタッフさんに向けて「ケアする人のケア」のお話をするとの事。いかがでしたか。
グリーフケア。森口さんに出会った時私はまさに「グリーフ」のまっただ中でした。肉親を亡くしたことでの悲しみで日常生活の感情が不安定になっていたのだなと今は分かります。あの時の事を思い出してみるとバーンアウトしかけた時というのは決して感情を失ってしまうのではなくて、悲しみ(哀しみ)や怒りの感情が喜びや嬉しさ楽しさの感情を押しのけて過敏になってしまう状況が続いたのではないかと考えます。前回のコラムで森口さんが話していた「もうどうやっても立ち直ることができないと思われるときにこそ、見ることができる風景がある」。私はこのグリーフの時があったからこそ「ケアする人のケア」と出会い、見ることや経験できたことがあったと確信しています。

3月カレンダ―「雛あられ」

少し話を変えてみますね。
私は福祉の現場でアート表現を用いたアクティビティを行っていますが、これは利用者の方々だけに向けてのことではないのだなと感じた出来事を紹介したいと思います。
施設の壁に毎月季節を感じる絵を描いています。ある時翌月の飾りの担当となったスタッフが利用者さんに協力をしていただきながら準備を始めました。パーツを制作している時にはあまり気にならなかったのですが、実際に壁に貼られた絵を見てとても驚いてしまいました。その時に飾られたのが黒やグレーの色遣いのお雛様とお内裏様だったのです。春のイメージでピンクや赤、水色を使う事が多いと思われるお雛様が黒い・・・・。その時にいかにそのスタッフが疲れているのかが分かりました。本人が自覚しているか無自覚なのかはその時には聞けなかったので不明ですが。さすがに皆さんが毎日見る絵なので「色使いを変えましょう。」と提案して手直しをしました。
そのスタッフは壁絵で自分の内面を表現できたのでしょうか。翌月には明るい色使いのいつもの作品作りに戻っていました。
言葉や態度だけでは分からない内面からの表現をアートが助けてくれることを実感した出来事でした。私達がアートを福祉の現場に取り入れたいと思うのはケアで繋がる人々が非言語的に自分を表現するツールとして有効なことを感じるからかもしれません。このような出来事は他にもあるのです。それはまた少しずつ紹介したいと思っています。

最近「ケアする人のケア研究事業」のブックレットを読み返しています。もう一度土台から積み直してみたいなと思い原点に戻ってみています。10年間いろいろと経験したことがあるので基礎から見直してもその上にはまた今までと違った考えや思考が積みあがっていきますね。

5年ぶりにインフルエンザに罹り久しぶりにゆっくり休みました。身体から「強制休養」の指令が出たのかもしれません。お陰で気力も戻り元気です(笑)。

奈良の2月はとても寒かった記憶があります。今年はいかがですか?間もなく訪れる春が楽しみですね。

2015年2月 中村明子