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第7回は、認知症の「薬剤以外による療法」のなかから2つの療法をとりあげます。いろいろな方法が試みられていますが、今回は「認知機能…

非薬物療法にはどんなものがある? その1 前回(第6回)では認知・刺激・行動・感情について検討されていることをお伝えしました。それぞれの目的について、代表的な療法をお示しします。 薬品やその効果についてはこれまでにも多くの資料がありますが、非薬物療法についてはあまり知られておらず、私も今回新しい知識を得ました。そうした中からいくつかのものをご紹介します。 ①認知機能療法 認知機能療法として、リアリティーオリエンテーションがあります。見当識障害(自分が現在おかれている環境を理解する能力が障害された状態)のある方に対して、くりかえし毎日のケアを理解してもらう個人対象のものと、数名のグループにそれぞれの名前、日課、場所、日付といった情報を何度も伝えることで、見当識障害の進行を食い止めることや、自尊心の回復、社会参加への動機づけなどを目的としています。また対象者同士やスタッフとのコミュニケーションの深まりなどを通じて、援助関係の向上も期待できます。 ②刺激療法 刺激療法にはアロマテラピーがあります。天然香料の香りが、鼻の神経から直接脳に働きかけるので、脳、特に情動や記憶に関係する所に良い影響がある、とされます。香りの種類によって、意欲を高めたり、反対に興奮を収めたり、といった効果が確かめられています。また絵画療法も行われ、絵を通して、自分の感情を表に表す練習をしています。絵の練習をするのではなく、自分の気持ちをストレートに表現するように指導します。たとえば「花の絵をかいてください」ではなく、「腹がたっている時の気持ちを色であらわしてください」という風に、上手・下手のない自分の気持ちを思い切って表現することを通じて、対象をよく見るようになり、また感情面も安定してくると言われます。 次回は回想療法、バリデーション療法といった療法についてお話します。 【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】 [執筆者] 中島孝之 [プロフィール] 1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。