本来、私は旅行が好きである。車いすを常時使うような今の生活スタイルになる前は、結構いろんなところに行っていた。自立歩行ができていた大学・会社員時代には、一時期、夏と冬、年に2回の海外旅行をしていたときもある。
私がシャルコー・マリー・トゥース病という診断を受けたのは、2歳のとき。進行性の病気なので、大学生までは下肢装具をつけて歩いていたし、その後は手術を受けて片松葉づえ歩行に。
慣れていない、知らない場所でも、歩けていればどれだけハードルの高い場所でもなんとかなるだろう、と大した不安もなくどこにでも行っていた。大学4年のときには、単身、アメリカでホームステイして、いろいろな経験をした。「行けるうちにいろいろ行っておいてよかった」最近は特にそう思うのである。

かつて海外、特に離島などによく旅行していた時には、今思えば車いすではなかなか行きにくい場所も確かに多かった。ニューカレドニア、プーケット、バリ、ランカウイ、ペナン・・・。もちろん、メジャーなアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、韓国にもとりあえず足跡を残せたのは本当に良かったと思っている。
日本では経験できない素晴らしい風景、観光スポット、食事、雰囲気、匂い、現地の人の優しさ・・・。

29歳で車いすを使うようになり、常時使いだすようになったのはここ5年ぐらいのことになる。
車いすを使いだして、移動が格段に早く疲れも減ったものの、世の中のバリアフリー度が進んでいるとはいってもまだまだ一人では行けない、不便なところも多い。サポート体制をしっかり組んで準備をすれば、どんなに障害が重くなってももっと安心して自由な旅が可能となるが、歩けなくなった最近は、もっぱら車で行ける範囲で「バリアフリー度」を最優先に考えた旅行をすることが多くなってしまった。車いすユーザーでも行きやすくて、人生観が変わるぐらいの風景に出会うことが、今の私の大きな目標である。確かに国内でもまだまだ行ったことのない、知らないところは多いのだ。

最近、行ったところでよかったのは、滋賀県高島市マキノにある、メタセコイヤ並木。約500本の並木道を車で通り抜けるには、5分近くかかる。

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「圧巻!」緑の中に吸い込まれていく自分に思わずため息がこぼれた。緑生い茂る真夏だったけれど、今度は樹々が黄金に輝く紅葉の時期にもう一度訪れてみたい。

人生の中で行きたいところはまだいくつも残っている。ハードルは高いが少しずつ準備をして、行く不安がなくなればいいなと思っている。

[執筆者]
太田 啓子

[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。