歳をとって現役で働かなくなっても少しの事ならまだまだ役に立てる。その力をぜひ社会のために使ってほしいと思います。
奈良の森口さんへ
北海道の中村です。
お便りいただいてからあっという間に半年が経ちました。すっかりお返事が遅くなりましたことをお詫びいたします。春の壁絵どころか夏の壁絵になってしまいました(汗)。近年、こちら(北海道)も蝦夷梅雨があったり、夏が蒸し暑かったりと本州に似た気候に変わってきています。「今年は暑くて大変だ。」と毎年のように言っているので、北海道=涼しいは成り立たなくなってきているのでしょうね。もちろん北海道にも涼しい場所はあります。避暑で来られる方は道北または道東がおススメです。
前回はサードブレイスのお話だったと思います。大人だけではなく子供たちにもサードプレイスがあるといいと。私が学生の頃は確かに家庭と学校が世界のすべてでした。手芸や部活が心のサードプレイスだったのかも知れません。人生、セカンドライフが十分にあるのなら4番目の場所、5番目の場所つくりもいいですね。多様な価値観に身を置くと視野も広がるし刺激も受けることができワクワクしそうです。
7月の壁絵「入道雲とひまわり」
さて、私が所属しているアートアクティビティ創作工房とんぼ玉では、この春に新しい活動を始めました。今回はその紹介を少しさせてください。
高齢者の介護施設と通所事業所(デイサービス)で17年ほど働いてきて、介護保険を使われている高齢者は病気や虚弱のため生活の中で生きがいや役割を失ってきた人が多い現実をみてきました。施設に入れば(今は少し違うところがあるかも知れませんが)食事も作ることなく、身の回りの事も決められた流れで進んでいきます。考えることもないため認知症がすすんで、ますます自分の事ができなくなり…の悪循環が生まれます。「生活の中で役割を担っていただこう。」それが創作工房とんぼ玉のアートアクティビティの始まりでした。高齢者施設でアート作品をつくり、できあがった作品は施設を華やかに飾ります。「○○さんのおかげで夏の飾りができて季節を感じられます。」「今月も素敵で見やすいカレンダーを作って頂きありがとうございます。」と声をかけ、参加されている方に施設の飾りつくりという一つの役割を持っていただくように働きかけています。
この活動から更に一歩踏み出して、社会参加して頂こう!というのがこの度始めた事で、「シニアのちょこっと仕事」を作ろうと考えました。
9月カレンダー「桔梗と満月夜」
この案をあたためていた時にシニアの住み替え支援をしている企業から「住み替えで着物がたくさん捨てられているのだけれど、作品つくりに使うかい?」と話がきました。
「え?着物を捨ててしまうのですか?」と聞くと「着物はリサイクルしてもほとんど値がつかないからね。」と言うのです。個人で着物をたくさん所有していた方も、「リサイクルショップで安く買いたたかれるのなら、何かの役に立ってもらう方が着物も浮かばれる」と言って私たちに提供してくれました。そうして集めてみたところ1年間で200本もの着物(もっとあるかも)が集まり驚きました!
アート作品を作るだけではもったいない位のたくさんの着物。それをほどいて雑貨を作ろうかという話になりました。この活動の肝はシニアの力です。シニアの皆さんに力を発揮して頂き商品をつくり、それが売れることで対価として還元されていきます。ちょこっと自宅でお仕事をしてちょこっとお小遣いを稼いで美味しいものを食べ楽しいことができたらワクワクした生活をおくれるかもしれませんよね。ポイントは「自宅でできる」こと。足が弱っても家でお仕事ができます。そして何といっても着物はシニアの皆さんにとって得意分野です。私達より断然詳しいし、和裁をされていた方も多いです。虫よけの樟脳のにおいもへっちゃらです。
たまたま参加した地域交流セミナーでこの案を発表したところ、とても反響があってすぐに参加したいと希望者がきました。
その方々を皮切りに、ちょこっと仕事の輪は人づてにどんどん広がっています。今は介護保険の認定を受けている方の参加も増えました。皆さん張り切ってお仕事をしてくれています。「毎日少しずつ決まった時間お仕事をしている」「役割ができた」と同居している娘さんが話してくれています。サービスの受け手から、社会活動の担い手になりイキイキと生活して頂きたいと思っています。
さてさてこのシニアのちょこっと仕事はどのように発展していくか。好ご期待。
盆地である奈良の暑さはこちらの比ではないですよね。夏の乗り切り方などご伝授くださいませ。今日も私の住む町は33度まで暑くなっています(苦笑)。夏バテも含めて夏を楽しみたいと思います。
北海道札幌市
中村明子