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今回、視察に訪れたのは「ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウス」。ホーム長でがん看護専門看護師の宇野さつきさんにお話を伺いました。

活動内容

「ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウス」

 高齢化する障害のある人の生活を継続してサポートするためには、終末期の過ごし方や看取りについても考えなければいけません。高齢になっても住み慣れた場所で暮らし続け、その人らしい終末期を過ごすため、また最期の時を迎えるためにはどのようなサポートが必要なのでしょうか。

 今回、視察に訪れたのは2年前にオープンした『ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウス』。ホーム長でがん看護専門看護師の宇野さつきさんにお話を伺いました。

緩和ケアサービスを受けることができる住宅型有料老人ホーム

 ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウスでは、がんや神経難病を持つ人を中心に、終末期の療養場所を求める人を受け入れています。24時間体制でスタッフが常駐し、医療・介護サービスを受けることができる住宅型有料老人ホームです。施設内に訪問看護事業所と訪問介護事業所が併設されており、ケアプランに基づいた訪問看護、訪問介護サービスが提供されています。入居定員数は28名。入所対象は概ね60歳以上ですが、60歳未満の人も受け入れていて、40代、50代の人をはじめ、20代の末期がんの人が入居していたこともあったそうです。入居期限は3ヶ月と決まっていますが、現在、2年ほど入居している人もおり、期限だからといって退居させることはありません。

 看護師、療法士、介護士、調理師、事務員の専門職チームが入居者の生活をサポートします。看護師が24時間365日常時勤務しているため容態の急変に対応でき、往診医との連携もすぐに行えます。また、街全体がホスピスという考えのもと、ファミリー・ホスピスのチームが地域との架け橋となってその人らしい暮らしをサポートしています。外部からはケアマネジャー、訪問医、薬剤師、歯科医などが訪れて入居者の生活を支えています。

 在宅医療は徐々に体制が整っていますが、日本の高齢者施設で看取りまで行える所はまだ少ない現状があります。医療的ケアが必要になったり、看取りが必要な状態になると救急搬送されて入院することになり、住み慣れた場所で最期を迎えることが難しい施設が多いそうです。その点、ファミリー・ホスピスでは医療、介護両方のサービスを受けられるため、本人の思いを大切にしながら終末期を過ごし、ご本人が望む環境で最後を迎えることができます。

ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウスでのケアやサポート

 入居スタート時、どのように暮らしたいのか、どんな最期を迎えたいのかなどの聞き取りが行われます。緩和ケア病棟とは違い、抗がん剤治療と併用の入居も可能であり、医療的ケアをどこまで行いたいのか本人の意思を尊重します。食事や嗜好品の摂取も本人の希望を第一にしており、できるだけ自宅での暮らしが継続できるようにサポートされています。日本酒の大吟醸と柿の種が好きな入居者には飲酒を止めず、それまでの生活習慣を継続するサポートをされ、また、「お食い初め」ならぬ「お食いじめ」として、最後に食べたい物を聞いておくサポートも行われています。その他、「胃瘻をつけるか?」「抗がん剤治療をするか?」など、共に悩みを共有し、入居者の悩むプロセスに寄り添うこともケアの一環として行われています。

 日々提供されるケアはすべてケアプランに基づいて行われます。「訪問看護」「訪問介護」「居宅サービス」の3本だてでケアが行われ、概ね5分程で済む簡単な作業を除き、他はオムツ交換を含むすべてをケアプランに組み込まれています。

 職員数は事務職も合わせ40名ほど。内、看護師は15名、介護士が10名でパートタイマーも数名所属しています。夜勤は看護師2名、介護士1名で行なわれています。夜勤だけを担当する職員はおらず、日中の入居者の様子を把握している職員が夜勤も担います。昼夜トータルでケアしなければ入居者の状態は把握できないため夜勤業務専任の職員はいないということです。

継続したケアやサポートを提供するための安定した資金確保

 継続的な支援を維持するため、システムを持続していかなければいけません。海外ではNPOが運営するホスピスもありますが、ドネーション文化が根付いていない日本では難しく、ファミリー・ホスピスは株式会社で経営を行なわれています。安定的な資金調達は重要です。ファミリー・ホスピス神戸垂水では、訪問看護事業所と訪問介護事業所が併設されていることで安定した経営が可能となっているそうです。

視察を終えて 

 住み慣れた場所で終末期を過ごし、最期の時を迎えるためには介護だけでなく、常時の医療的ケアが必要になることがよくわかりました。在宅での終末期ケア、看取りを実現するためには介護・医療両方のサービスが提供できる体制作りと人材の確保の必要性。また、安定した資金の調達も重要で、ドネーションに頼りきれないことから自前で資金を調達する方法を持つことの重要性も感じました。

 ファミリー・ホスピス神戸垂水ハウスでは入居者の望むことを第一にしたケアやサポートが考えられていました。街全体をホスピスと考え、人生の最期までその人らしく生きるためのサポートに多種多様な人々が関わる様子も印象的でした。2階建の建物は一部が吹き抜けになっており、2階にも1階の物音や人の声、また厨房から調理する香りが漂うよう考えられていました。建物内は無機質な空間ではなく、生活感を感じられる配慮がされ、広いお庭にはいろいろな花が植えられたイングリッシュガーデンが設えられていました。体調管理の配慮だけでなく、環境にも配慮されたトータルでのサポートを考慮している場所でした。