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東日本大震災によって亡くなった多くの障がい者がいます。あと少しの支援があれば助かったかもしれない命。切実さが伝わる被災と避難の記…

東日本大震災は、地震そのものの被害だけでなく津波によって、多くの命を奪いました。障がい者の死亡率は、障がいのない人に比べて数倍になったともいわれています。

また、福島県では原発の問題も加わり、多くの人が長期間に渡って避難生活を強いられる事態ともなりました。とりわけ、障がい者にとって、「避難生活」というのは、緊張とときにはパニックを引き起こすこともあり、そういった実態の認知不足から新たな摩擦と問題が生まれることも、よくニュースなどでも取り上げられていました。 あと少しの支援があれば助かったかもしれない例が、いくつも実はあったのです。

「障がい者の犠牲をなくすため、向こう三軒両隣の助け合いが必要だ」本書の帯に書かれた言葉です。
いざというときに「大丈夫か」と声をかけ、大丈夫でなかったら数分間でも手を貸すシステムが、最初に著者から提言されています。

このシステムがあれば、障がい者だけでなく、多くの人が有事を乗り切れることでしょう。 特に人間関係が希薄で、普段、隣近所の人とも顔を合わせることが少ない都会に住む私は、はっとさせられる提言でした。
震災から半年後に私は福島に研修に行くにあたって読んだ本ですが、障がい者が有事を乗り切るためのヒントはいまでも色あせません。

『あと少しの支援があれば 東日本大震災 障がい者の被災と避難の記録』中村雅彦著 株式会社ジアース教育新社より発売中

[執筆者]
太田啓子

[プロフィール]
立命館大学 衣笠総合研究機構 客員研究員。博士(学術)。専門は、障害者福祉、障害学。「職業訓練における指導員のジレンマ-職リハの取り組みを通して」横須賀 俊司, 松岡 克尚編著『障害者ソーシャルワークへのアプローチ―その構築と実践におけるジレンマ―』など執筆。