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国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、障害をもちながら地域生活する中で、よく思うことなどについて綴っています。電子…

私が2歳のときに診断された、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)という病気は、末梢神経障害が起こることを特徴としている。人によって、症状の出方も出る場所もその程度もまちまちだが、私の場合は子どものときから主に、手と足に麻痺がある。進行性の病気なので、子どものころは、今よりずっと障害の程度も軽くて、先に麻痺の出た足の力をカバーするため、手の力で代償して、小学校の時は、逆上がりをクルクル、庭にあった木によじ登ったりもしていた。とにかく、外遊びが大好きで、学校から帰ったら自転車に乗って、しょっちゅう友達と遊びに行くような子ども時代を送っていた。

それから数十年。現在は、車イスユーザーで握力はゼロ。そもそも握力計が重くてもてないので、計測が不可能。手先はダメでも腕の力はいまだに強い、というアンバランス。
握力がないと生活上、いろいろなところで不便は感じるが、それでも、手動式のアクセルブレーキに改造した、太郎という愛称までつけた車に乗り、筆圧がないから鉛筆は難しいけれどボールペンでなら文字も書けるし、器用だねとリハビリの先生に感心されながらお箸も使えている。
今年買い替えた太郎は4代目。車イスを自分で積み込むのが難しくなって、4代目からはオートボックスというモーターで車イスを格納できる装置をつけている。
こうやって、私の日常生活は工夫工夫の連続で成り立っている。人からアドバイスをもらったり、福祉関連の展示会などにも行ったりする中で、必要な情報をいろいろと得るように、日頃からも心がけている。すべては、自分の生活がもっと楽に、安全に、そして楽しくなるためだ。オートボックスをつけて、念願だった一人旅という趣味も増えた。
そうはいっても、病気の進行は避けられないし、できないことも増えていく。病気に対する研究が進んでいるといっても、目に見える形にはなかなかならないものだ。諦めと不安は募る。

この10年ほど、インクルーシブデザインというものに関わってきた。インクルーシブデザインとは、日本では「高齢者や障害のある人など、特別なニーズを抱えた消費者をデザインプロセスの上流工程へと積極的に巻き込んでいく手法」とされている。
インクルーシブデザインを世界中でずっと広めてこられた、京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab (D-lab)のジュリア・カセム特任教授は、障害のあるデザインパートナーの役割を、デザイナーをインスパイアーさせることだと私に何度も言ってきた。

そのD-labで、昨年、あるデザインプロジェクトに患者会の仲間数名と参加した。英国王立芸術学院(RCA)からフランク・コークマン氏が招聘され、CMT研究班にも参加されていた応用生物学系および昆虫先端研究推進センターの山口政光教授との3か月にも及ぶ共同研究プロジェクトであった。
「社会的な認知度が低く、患者数が少ないために治療薬の開発がビジネスとして成立しにくい希少難病の医薬品研究において、製薬会社の興味を惹くような戦略を考え出すことは可能だろうか?」「疾患モデルショウジョウバエを薬剤化合物のテストに用いることで、患者自身が自宅で治療薬候補物質を見つけ出し、検証に参加することができるだろうか?」
上記2つの「デザインの問い」から、末梢神経が障害される疾患である「シャルコー・マリー・トゥース病」治療薬を見つけるために開発したCMTモデルショウジョウバエを利用して、患者自身が治療薬を見つける活動に参加する、家庭用疾患治療薬スクリーニング・キットが提案された。その名も、「Designs for Flies — 家庭用疾患治療薬スクリーニング・キット」(D-Labサイトより引用)。


京都工芸繊維大学 D-Labサイトより

治療法も薬もまだ見つかっていない難病は、まず、多くの人にこの病気を知ってもらうことから始めないといけない。患者が自分の治療に積極的に関われるシステムなんて、まさに画期的!希少といわれビジネスになりにくい他の多くの難病にも、応用が可能かもしれない!このプロジェクトは、東京でも展示され、800人を超える人が見に来てくれたらしい。加えて、いくつかの新聞にも掲載された(私もJAPAN TIMESのインタビューを受けました!)。
地味な役割ながらも、地道に希望は捨てずに、一人の当事者としてできることを模索する毎日である。

[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。