国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、障害をもちながら地域生活する中で、よく思うことなどについて綴っています。電子…
極度の末端冷え性ということもあって、私は大のお風呂好きである。
段々と寒くなってきているこの時期、真冬を目前に控え(奈良の冬は本当に寒い!)、先日我が家のお風呂をリフォームした。築40年の我が家で、お風呂のリフォームは初めて。冷たいタイル張りのお風呂からユニットバスへ。それだけでも随分と浴室内は暖かい。最近の浴槽も昔のとは違い、保温機能が格段にアップしていて、寝転がって入れる大きなサイズにしたこともあり、とにかく快適で入浴タイムを前にも増して楽しめるようになった。
以前は、温泉にもよく行っていたが、なかなかバリアフリーで入りやすい温泉が少なくて、最近は、段々と足が遠のいていたところだった。
今回のお風呂のリフォームでは、お風呂場を少しでも温かく冬場でも入りやすくする目的以外に(高齢の親がヒートショックを受けないように!)、私の障害の状態に合わせてお風呂場のバリアフリー度を上げることも目的としていた。暖房機能もいれたので、1つ目の目的はまず達成。そして、バリアフリーにするために、いくつかのリフォーム業者に相談したところ、ユニットバスしか選択肢がないことがわかった。
これら2つの目的以外にも、もう一つ。数年前から、段々浴槽をまたいで外に出るのがしんどくなってきていたことも将来の不安要素となっていた。以前の浴槽は、地面から20cmほど下にほって埋めていたこともあり、なんとか一人で出てこられていたが、ユニットバスにリフォームするにあたっては、40cmほどの浴槽をまたいで外に出ないといけない。今の足の状態では到底無理なので、何かいい方法はないものか。
患者会の仲間で、お風呂の浴槽にリフトを付けたといっていた人がいたので、お宅に見に行ったりもしたのだが、そのリフト装置のバッテリー充電や掃除の面倒さを考えると、私に適しているのか、実のところいまいちピンとはこなかった。
紹介してもらった福祉業者にそんな相談をしていたところ、私が一人で操作できる選択肢になりうるいいカンジの、他のメーカーのリフトを提案してくれた。
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本来は、介助者がいて、介助者に操作してもらうリフトだけれど、「太田さんは腕の力もあるし、壁につけた手すりを頼りに一人でリモコン操作できますよー」。実際そうやって介助者についてもらうことなく、一人でお風呂に入っている人がたくさんいる、という言葉に背中を押されて、このリフトをつけることに決めた。
写真では大掛かりな装置のように見えてしまうのだが、使っていないときは実際、窓の方に押しやって、他の家人には邪魔にならないようにすることもできる。
このリフトに乗って浴槽まで移動する間は、まさに遊園地にある乗り物に乗っている感じ。ゆらゆら揺れることに恐怖を覚えるどころかワクワクしてしまう私にとっては、実に楽しい乗り物となっているのである。
「リフトに慣れるのに3か月ぐらいかかるかも」このリフトをつけてくれた福祉業者は納品のときにそう言ったものだが、早々と、数週間で私は乗りこなすようになった。慣れてからは、格段に、お風呂に入ることが億劫にはならなくなった。どれだけ好きなことでも、やりにくい、時間のかかることであれば、人はそのことに億劫さを感じるようになってしまうものだ。
障害者が若いときと同じように、今までの生活をずっとしていこうと思えば、障害の状態に合わせて、大掛かりな変更や改造も必要となることがある。でも、少しでも長く快適に、いままで通り、いやそれ以上の生活をしていくために、私にとっては必要な投資だったのだと思う。
冷え切った体を温かいお湯に沈めると、♪い~い湯だな あはは 昭和な歌がいつも頭をよぎるのである。
[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。