国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、障害をもちながら地域生活する中で、よく思うことなどについて綴っています。電子…
新年早々、食べた牡蠣があたり私はノロで苦しんでいた。昨年末あたりからノロが10年ぶりに大流行、とニュースで騒がれていたけれど、本当に苦しくてツライお正月だった。ロクに食べられない間、つくってもらった雑炊がどれほどおいしかったことか!
私は食べることが大好きだ。おいしい食べ物には目がなくて、きっと直感的においしいものやお店を探すことには長けているのではないか、と思っている。最近は、おいしくて食べたいもの<バリアフリーで車いすユーザーの私でも使いやすいお店、をつい選んでしまうことが多くなってはいるけれど、それでも、「どうしても行きたい」「どうしても食べたい」場所のチェックはよくしているほうだと思う。
昨年末は家族でお祝いを兼ねて、ずっと行きたかったオーベルジュのレストランに行った。遊び心満載のお料理の数々、テラスから見えている景色をそのままお料理にしていたり、とおいしいのはもちろん、「こんなの見たことも食べたこともない」と驚きの連続だった。しかも、奈良の高級レストランでは珍しく、思いがけず車いす駐車スペースもあり、車いすトイレもあり!ウェルカムな雰囲気で、幸せな気分で満たされた時間を存分に味わった。
ところで家ではここ数年、ヘルパーさんに家事支援で週に2日ほど来てもらって、日々の食事をつくっている。意外とキッチンの中というのはこまごまとした移動が多いものだし、包丁が持てなくなってからは支援の受け時だな、とある意味、自分で作ることを諦めた。ところがヘルパーさんの手さばき、あんなに苦労して皮むきをしていたじゃがいもだってスイスイと、しかも短時間で!躊躇していた時間がもったいなかったと実は少し後悔しているのである。
大学生のときも会社員時代も一人暮らしをして自炊していたから、私には自分の好む味付けやちょっとしたコツ、というのもあるし、いまでもスーパーのチラシが入っている日に買い物に行き、冷蔵庫の中の食材を余らせないようにメニューを考えている。うちでは家庭菜園もやっているから、ほぼほぼ野菜には困らない。普段は節約しながらその中で最大限のおいしい料理をつくろうと心がけている。
そしてそのやり方は、ヘルパーさんが主導で料理をするのではなく、「私」がご飯をつくるのを手伝ってもらう、というスタイル。調理の時間は、私がずっと横につき、メニューや味付け、食材の切り方に至るまで細かな指示を出している。「的確で分かりやすかった」と言ってくれるヘルパーさんも多い。「私の」ご飯は、自分でいうのもなんだが、これがまた意外とおいしいとよく言われているのだ。
料理をしている間、もちろん、「こうして。ああして。」と調理の仕方について言っているのだが、日々のたわいない話の時間もまた多い。ヘルパーさんから、いろいろと「主婦の知恵」を教えてもらえるのもとてもありがたい時間だと思っている。
親子のような年の差のあるヘルパーさんがほとんどだけれど、こうした毎週の会話の積み重ねで自然に、そしてとても親しくなっていく。事業所、ヘルパーさんが幾人ともなくこれまで変わっていったけれど、いま、来てくれている人とはとりわけいい関係を築けている。
支援を受けている人と支援者。仕事上の関係ではあるのだけれど、「いい関係」を築けるともっと楽しい時間をお互い共有できると実感している。
[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。