国指定の難病、シャルコー・マリー・トゥース病を患い、障害をもちながら地域生活する中で、よく思うことなどについて綴っています。電子…
家からすぐ近くにある奈良時代の王朝があった平城宮跡では、いま、梅が見ごろを迎えている。車で5分、ちょっとリラックスしに行くには、平城宮跡はとても便利な場所なのだ。あともう数週間もすれば、うっとりするような桜並木が満開を迎えるだろう。
梅林の中は芝で、車いすで一人、行くには少し大変だけれど、外の歩道から近いので十分楽しめるスポットだ。なにより、人が少ないのがいい。
世界遺産が身近にいけるところにあるなんて、さすが奈良だ。
この平城宮跡は、ずっとなだらかな平地がどこまでもつながっていて、ところどころにアップダウンもあったりするのだけれど、車も走っていないから、ウォーキングやランニングをするにはもってこいの場所だ。
私も、29歳で車いすを使うようになる直前ぐらいまでは、よくここでウォーキングリハビリをしていた。
とにかく、復元された大極殿や朱雀門、資料館をのぞけば、ただのだだっ広い地面がどこまでも続いているので、自然のパワーを浴びに行く感覚で、以前、私は毎日、ここに通っていた。
いまでも車いすで行きやすい散歩コースとして、しかも結構な運動量になる距離があるので、重宝している。
股関節を痛めてからはプールで水中歩行リハビリに切り替えていたし、それもできなくなって車いすに全面的に頼るようになってからは、主治医の紹介を受けて京都にある専門のリハビリクリニックに通っている。ここのクリニックには、病気のことをよく勉強しているPTやOT、STがたくさんいて、普段私を担当してくれるのは代わりばんこに3名ほど。皆、女性でとても話しやすく、このクリニックに通って3年目にもなるので、いろいろな相談やおしゃべりをしながら、私のリラックスタイムとなっている。
クリニックで教えてもらったことを家でも実践し、私の日常生活はなんとか保たれているのである。
月に1回の通院であるからこそ、前の状態と比較し、なんとか維持するための最善の方法をアドバイスしてくれて、病気の進行に伴う動きにくさへの不安も共有してもらえる。やはり、全面的に信頼し慣れた人でなければできないことだ。
いまさらスタスタ歩けるようになりたい、とか走りたいとかは思わないけれど、なんとか日常生活が今の状態で維持できて、なおかつ自分のしたいことを諦めたくはない。そのためのリハビリは私にとってとても重要で、楽しみながら、時には頑張っている自分へのご褒美もあげながら続けていきたいと思っている。
[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
シャルコー・マリー・トゥース病という難病により、車イスユーザーの障害当事者。現在は、仕事をしながら趣味を満喫しつつ、地域生活をしています。好きなことは、食べることときれいな景色を眺めてぼーっとすること。