15年前にスタートした「ケアする人のケア」の研究事業。立ち上げ当初に出会った二人がそれぞれの気づきや成長を語り合うコラム。 ケアす…
北海道の中村さんへ 奈良の森口です。 お盆も過ぎ、近畿地方も少し涼しい時間帯が増えてきました。 お盆前は全国的に猛暑続きでしたが、夏野菜の育ち具合はいかがでしたか。 実は我が家も4歳の次男と一緒にプチトマトを育てていたのですが、赤くなりかけたいくつもの実が、ある日突然消えていました。鹿に食べられたのです。奈良公園といえば・・・の、あの鹿です。我が家は奈良公園まで歩いてすぐという立地で、お花や野菜はネットをかけるなどして、よほど気をつけないとダメですね。 プチトマトは苗を一つだけ買ってきて植えたものだったので、鹿に食べられる前に20個近く収穫して食べられたことで今年は良しとしましょう。 ケアカフェのご報告、楽しく読ませていただきました。 ピアノの生演奏にドリップコーヒー、大きな窓から白樺並木・・・その環境を想像するだけでなんだかほっとしますね。北海道はじめ全国にケアカフェが広がっていっているということは、そういう「場」のニーズがあるということですよね。その必要性に気づいた人が主体となって運営されているというのもステキです。 お金儲けのためでもない、制度の要請でもない、「人としてどうあるのか」に立ち返って物事を考えられる場が求められているのかもしれません。まさに「原点に戻る場所」だと思いました。
〈帰省のついでに足を伸ばした大山の麓から(鳥取)〉 さて、私も何かクリエイティブな話題を・・・とも思ったのですが、今回はとりあえず前回の「ケアの仕事をする人のケア」の続きということで、中村さんのコラムにもあったセルフケアのことを書きたいと思います。それも、今回はとても個人的なことを。 私は39歳で第二子を出産したのですが、それ以降とても体調が悪かったのです。体調が悪いといっても、何かの病気だとかそういうことではなく、常にだるい、寝ても寝ても眠い、肩こりが辛い・・・これだけでも乳幼児の世話と仕事の両立はかなりストレスフルになるのですが、一番悩まされたのが口内炎でした。胃腸の不調というよりもどうも肩こりと連動していて、治ったと思ったらまた別の場所にできる・・・の繰り返しで、1個~複数の口内炎がいつもできているような状況でした。 どうしたらいいのか困っていたところ、たまたま次男の保育園のママ友がヨガの先生をしておられて、少し話を聞いたら私の体が求めているものだと思えたので始めることにしました。たしか中村さんもヨガをされているのですよね。 ヨガを始めて1年以上たっても体調は相変わらずだったので、ヨガを続けながら、冷え症対策をしたり、食事を少し見直したり、整体に通ってみたりと、いろいろ試行錯誤を続けていきました。そうしたところ、体のだるさはやわらぎ、少しずつ体力も戻り、生理痛も緩和され、思いがけず春の花粉症もかなり軽症で済むようになり・・・。ただ、口内炎だけが相変わらずという状態でした。 そしてそして、今年の5月と6月に体調を大きく崩して高熱が出たのです。実に40度越え!この歳になってこの熱はあり得ない・・・と思いましたが、ヨガ的にはこれは良いことなのですよね。「体が高熱を出すことで体調を整えようとしている」、「そもそも体力がないと高熱を出すことはできない」と教えてもらっていましたので、1回目の発熱は薬を飲まずに耐えました。さすがに2回目の発熱の時は、肋間神経痛と思われる痛さがひどかったこともあり、病院で薬をもらってようやく回復しました。 その後・・・なのですが、なんと口内炎ができにくくなったのです。「好転反応」という言葉は知っていましたが、本当にそういうことがあるんですね。今ではキムチも美味しく食べられるようになりました(笑)。 口内炎が苦痛でヨガを始めたのが、私のセルフケアの試行錯誤の始まりだとすると、それから実に3年半かかった計算になります。いやー、長かった!
〈NPO法人スウイングのアーティストXLさんに描いてもらった似顔絵〉 いろいろな試行錯誤をしてきたので、最終的に何が効いたのか、もはや全くわかりませんが、振り返るとやはりヨガに出会ったのが大きかったように思います。 私の通ったのが、単に体を動かすというだけでなく、心のあり方や気持ちの向け方についてのお話を聞くこととセットになったヨガ教室だったというのもあります。とりわけ、私たちが資本主義の競争社会のなかでどれほど急かされて生活しているか、本当にそれは必要なことなのかということに気づかせてもらうことがたびたびありました。 私にとってはまさに、「私は何をしたいのか、どう生きたいのか」という原点に思いをめぐらせる時間になっていて、そこを起点に心身を整えることができてきたのかなと思います。 ケアの仕事も、他の仕事も、そうした原点に目を向けることは、元気に働きつづけるために大切ですよね。 福祉事業や何らかのお商売という「仕事の形態」があって、法律や制度の枠組みの中で仕事をこなすとなると、疲れやストレスのたまる労働になってしまいます。けれども本来その福祉事業は高齢の人や障害のある人を支えるためのもののはずで、お商売一つとっても元々はその商品やサービスが人の役に立つからこそ仕事として成り立ったはず。 生き生きと働いている人はそこにきちんと軸足を置いている人なのかなと思います。 ただ、そういうことって、ついつい目を向けることを怠ってしまうのですよね。 私の体調にしても、今も油断をすると口内炎ができますし、調子が良くなったらなったでメンテナンスがいい加減になったりと(笑)、セルフケアの学びに終わりはありません。私がこれから歳をとっていくというのは間違いのない事実なので、また悪化することがあるかもしれません。 でも一度こうして元気になれたというこの感覚は、さしあたり40代を生き延びるうえでの自信にはなったと思います。 季節はこれから秋に向かいますね。奈良はまだまだ残暑も続くと思いますが、北海道はきっと早めに美しい季節を迎えるのでしょうね。お互い、自然の変化を楽しみつつ、充実した秋を過ごしていきましょう。 2015年9月 森口弘美