自閉症の弟とのハッピーな生活の毎日を通して、姉が感じている弟や社会に対する思いを素直に語ったエッセイ。読み終わった後、なんだかほ…
エッセイは、おーちゃん(本名:廣木 旺我さん)の人となりを1歳上の姉、佳蓮さんが紹介するところから始まります。
おーちゃんは、自閉症で知的障害がありますが、姉からみると、今も昔も変わらず純粋な心の持ち主でただの1人の弟にすぎません。
それは天使も驚くぐらいの純粋さ。争いが大嫌いなおーちゃんは、「にっこり!」といって、ギスギスした空気感を一瞬にして和ませてくれるのです。
エッセイは、おーちゃんの保育園時代、小学校、中学校、高校時代をふりかえりながら、そして現在、好きな絵を描くことに集中できる環境として専門学校を選んだこと、これからについて姉の視点で展開されていきます。
おーちゃんは、ひまわり学級を含め、すべて地元の普通学校に通いました。
1歳上の姉だからこそ見えている同じ景色の中で、おーちゃんの周りの人たちが優しさにあふれた人たちであることを肌で感じていたようです。
もちろん、1歳上であるがゆえに、おーちゃんを見た同級生からの心ない言葉に傷つくこともありました。
けれども、姉が弟と一緒にいる生活を「面白すぎる」と力強く語る展開は、読者をもスッキリとハッピーにさせてくれそうです。
おーちゃん画伯の絵もビビッドでステキです。
[執筆者]
太田啓子
[プロフィール]
立命館大学 衣笠総合研究機構 客員研究員。博士(学術)。専門は、障害者福祉、障害学。「職業訓練における指導員のジレンマ-職リハの取り組みを通して」横須賀 俊司, 松岡 克尚編著『障害者ソーシャルワークへのアプローチ―その構築と実践におけるジレンマ―』など執筆。