最後の第6回は「食事の味付け」について。健康維持や病気治療のため塩分や糖分などを制限しつつ、豊かな生活をそこなわないための「高齢…
今回は、高齢者の食事の味付けを考えます。味と好みの問題ですので私個人の考えを主体に記してみます。
高齢になると、感覚としての味覚は次第に衰えてきます。つまり同じ味付けでは薄い味に感じて美味しくない、食欲がわかず食べる気がしない、食の楽しみがなくなる、大げさに言えば生きる意欲も無くなってしまうことになります。
今後の健康や病気の治療という観点からは、食材や調味料、調理法について、それぞれ注意が必要ですが、健康を保つ、あるいは現在の病気を悪化させない範囲で本人の好みに合わせて、思い切った食材を使ってみてはいかがでしょうか。
例えば血圧が高くなるから、と塩分を制限している場合でも、食べ物を大量に食べることはまずありませんから、醤油、塩、味噌などによるしっかりした味付けをしても摂取する塩分としてはあまり多くないと考えても良いだろうと思います。
糖尿病で糖分の制限がある場合でも、高血糖が全身に悪影響を及ぼす合併症が生じるまで何年もかかり、ある程度の高血糖であれば十分耐えられると思いますので、たまにはお菓子や果物など、楽しみにしていただいても良いでしょう。
反対に糖尿病の治療をしているとき、食欲が無くなったり、食べられなくなって血圧が下がってしまう低血糖は非常に危険です。最近の糖尿病治療では、高齢者の年齢に応じてやや血糖が高くなることも、ある程度考慮しています。
またカロリーの高い脂肪分の消化吸収は悪くなっていますので、エネルギーの補給には糖分が最適です。年齢的に体を作っていくのに必要なたんぱく質や脂肪やより、すぐエネルギーとして使える炭水化物として、ごはん、うどん、パン、時にお菓子などを増やすことを考えていただきたいと思います。当然血糖は上がってくることが考えられますが、高血糖が急に体に悪影響を及ぼすとは思えませんので、美味しく好きなものを食べていただいて、老後を食の面から豊かにしていく事を優先してください。
[執筆者]
中島孝之
[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。