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今回から9回にわたり、中島孝之ドクターによるコラム「認知症について知ろう」がはじまります。第1回は認知症についての基本的なお話で…

世界一の高齢化社会を迎えて、今後猛烈な勢いで「認知症」の方が増えていきます。これから三回にわたって認知症について考えます。

「認知症」とはどんな病気でしょう?

正確な定義では
①一度獲得した知的機能が
②後に生じた脳の障害によって低下し、
③日常生活や社会生活が持続的に営めなくなっている状態といえます。

つまり生まれつき知能低下のある方や、お酒で一時的に酔っている状態などは除外しています。
「認知症」と似た状態となるものに、老人性のうつ病、視力や聴力の低下に伴って、人がうわさする、覗いているといった幻覚・妄想や、様々な精神疾患が高齢になってから起こったものなどがあり、診断が難しいものです。ただ「認知症」の中には、治療によって回復するものも少なくありません。
慢性硬膜下血腫、ホルモン異常、ビタミン不足、薬物(睡眠剤などの)中毒、正常圧水頭症といった治療で回復が望めるものも含まれますので、注意が必要です。

代表的な「認知症」はアルツハイマー病です

「認知症」全体の半分くらいはアルツハイマー病。高齢になって神経の組織(神経細胞・神経線維)が壊れていく状態がずっと若い年齢で、早く強く起こってしまうもので、原因はまだよくわかっていません。
こうした原因不明のものに、レビー小体病、ピック病などがあります。また繰り返し起こった脳梗塞に引き続いて起こる脳血管性認知症があり、これらを合わせると全体の約90%となります。
現在200万人くらいの認知症の方がおられますが、2015年には215万人、2030年(18年先)330万人と増えることが推計されています。60歳台では5%くらいの患者数ですが、90歳では半数が発症するとされ、高齢化にともなって、今後急速に増加することになります。

【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】

[執筆者]
中島孝之

[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。