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第2回は、認知症の半数を占めるといわれるアルツハイマー病のお話です。脳の神経組織が壊れることで起こる「中核症状」の種類と、病気の…

アルツハイマー病の症状:まず中核症状について

◎記憶の障害
特に最近の記憶が障害され、エピソード記憶の障害(生活の内容そのもの、たとえば何を食べたかではなく、食事したことを忘れてしまう)が特徴的です。正常であれば、人の名前が出てこないことはあっても、その人が知り合いであることまで忘れてしまうことはありません。

◎判断力・実行力の障害、抽象的な考え方の障害
単に記憶の障害だけでは多少困ることあっても、生活が出来なくなることはない。これは正常であれば、判断力や実行力は失われていないことによる。

◎見当識障害
時間、場所、人などに対する理解が出来なくなる。

◎言語障害
名詞が出てこない。言葉の意味を理解出来なくなる。

◎認知障害
見たものが何であるかを理解する視覚認知が障害される。また空間認知も障害され、トイレの場所がわからない、よく知っている道に迷う、といった症状がみられる。

◎性格・人格の変化
几帳面だった人がだらしなくなる、怒りっぽくなる、などの変化がおこり、人格の崩壊によって共同生活が困難になってくる。

アルツハイマー病の進行

発症後、数年の経過で次第に悪化して行きます。現在の治療は、この進行を出来るだけ遅らすことを目的としています。

〈初期(Ⅰ期)〉
記憶障害:名前が出てこない・出来事・買い物の内容を忘れる
見当識障害:今日の日付や人がわからない
情動変化:自発性低下・意欲低下・うつ症状

〈中期(Ⅱ期)〉
見当識障害がさらに強くなり、日常生活が困難になる。病気の自覚が無くなる(病識消失)・無関心・徘徊・作話・幻覚・妄想・夜間せん妄

〈末期(Ⅲ期)〉
高度認知症症状:全知的機能の低下・人格の崩壊・自発言語の減少消失・関節固縮・寝たきり

他の疾患と同じように、早期発見、早期治療が効果的です。診断のついていない高齢者でも、こうした症状があれば、一度ケアマネージャー、主治医に相談してみる必要があります。
次回は認知症の介護が困難となる主な原因のBPSDと呼ばれる周辺症状についてお伝えします。

【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】

[執筆者]
中島孝之

[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。