第3回も前回に引き続き、アルツハイマー病の症状について。今回は、認知症の介護が困難になる原因ともいわれている「BPSD」とよばれ…
アルツハイマー病の症状:BPSDについて
BPSDとは、周辺症状(中核症状に対して)といわれていた症状で、「行動心理学的症候」と訳されています。
認知症の介護が、病状の進行によって次第に困難となってくるのは、主としてBPSDが原因です。
◎BPSDの症状
認知症の方にしばしば見られる知覚、思考、行動の障害で、前回説明した中核症状(記憶障害、見当識障害、失行、失認、言語障害など)と区別して考えることが必要です。おもな症状には以下のようなものがあります。
徘徊・多動・興奮・攻撃的・不潔行為・抑制が出来ない・不安・焦燥・妄想・幻覚・うつ状態・介護への抵抗・不眠など
BPSDが出現すると、中核症状が悪化したように感じてしまうので、注意が必要です。
◎BPSDで困ることは
介護の手間の増加(介護に抵抗・目が離せない・不潔など環境の悪化 など)
精神的なダメージ(悲しみ・不安・落ち込み・絶望感・イライラ感 など)
つい・・・(荒い言葉・暴力的な対応・放置 など)
社会的な問題(地域での孤立・医療機関受診、入院、入所が困難 など)
本人にとっては(外傷リスク・行方不明・病気・感染・栄養障害 など)
◎BPSDの悪化要因
大切な物の置き場所を思い出せない・・・物盗られ妄想
現在の自宅の記憶が無い・・子どもの頃の家に帰ろう・・徘徊
排泄行為は恥ずかしい・・・介護に抵抗
(食事は未だなのに)食べたと言われる・・・食事の記憶が無いだけなのに
(記憶にない)間違いをしかられた・・・私にも誇りがあるのに
こうした心の葛藤が更に症状を悪化させてしまいます。
◎BPSDへの対応と工夫
まずリクレーション療法、音楽療法、回想法などの心理的な療法を行います。同時に介護者に対するサポートを十分にして、介護者の不安や不満、不信感を軽減することが重要で、すぐにお薬での治療に頼ってしまうことは良いことではありません。
8月24日厚生労働省が、現在の認知症患者は305万人、65才以上人口の約一割にあたることを発表し、これまでの推計より大幅に増えて2020年には410万人にもなるとしました。
同時にBPSDの方も増えることになり、今後大きな問題になります。多くの方に、認知症、特にBPSDに関して良く理解していただいて、今後に備えて行く必要があります。
【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】
[執筆者]
中島孝之
[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。