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第4回は「認知症の睡眠障害」について。認知症の人に多くみられる昼夜逆転や睡眠時の異常行動。これら睡眠障害において注意するポイント…

認知症の睡眠障害

高齢になれば、不眠はしかたがないと思われがちですが、昼間眠って夜起きる、といった状態はやはり病的で治療が必要です。
特に認知症では、昼夜逆転、夜間に何回も起きる、眠っているのに動き回る(REM睡眠行動異常:突然大声をあげる、暴力をふるうなどの異常行動)、睡眠時無呼吸症候群、むずむず足、などいろいろな種類の睡眠障害が超こります。
こうした特殊なものでなくとも、高齢者は、なんとなく昼間も横になってウトウトするのが日常になって、このために夜なかなか寝付けない。あるいは、することがないので、夜早くから、例えば7時に寝てしまう(7時間寝ても午前2時です)ために、なかなか寝付けない、早く目が覚めて困るなどの訴えをすることが結構みられます。こうした不眠のタイプは、症状や生活習慣をよく聞いてみればわかりますから、治療もまず生活習慣の改善から行うことになります。
一方、先に述べた特殊な形、REM睡眠行動異常などについては、それぞれのタイプについて、専門的な治療の方針・薬剤の選択をする必要があります。なるべく早く見つけて専門医の診察を受けることが大切です。
認知症では、「タ暮れ症候群」という症状がよくみられます。この症候群の症状は、“タ方になると落ち着きがなくなり、帰宅願望などが増す”というもので、アルツハイマー病の方の60%にみられるといいます。この状態の要因は、睡眠障害のひとつである「概日リズム障害」(体内時計の調節がうまくいかなくなり、生活に望ましいスケジュールと一致しなくなった状態)で正常な睡眠—覚醒のリズムを保つことが困難になった状態と考えられています。記憶の細胞と同様に、脳の体内時計の細胞の働きが悪くなっている状態です。
お薬を使わずに、朝強い光を浴びる光線療法や運動や音楽療法を行ったりしますが、睡眠導入剤としてはこれまでの薬剤ではなく、最近使われるようになったラメルテオン:ロゼレム(武田薬品)のようなメラトニンを利用した自然な眠りが目標とされています。

【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】

[執筆者]
中島孝之

[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。