第6回も前回に続き、認知症に対する医療のお話です。今回は「薬剤以外による療法」について。非薬物療法の種類や内容について紹介します。
薬剤以外の療法 薬剤の使用以外にも、いろいろな方法が行われています。それぞれがどの程度の効果を挙げているか効果判定が難しいので、結論めいたことは言えませんが、患者さんの心に向き合う各種の療法が行われています。この中には、家族や地域住民への働きかけを含めて考える場合もあります。 今回と次回にこの内のいくつかを紹介します。日常、患者さんに接する時に、役に立つと思われます。 ◎非薬剤療法の種類 認知・刺激・行動・感情、それぞれの面からさまざまの方法が試みられていますが、ひとりひとりの症状に差があったり、実施するスタッフの力量の差などで効果判定は難しく、方法の優劣を決めることは適当ではありません。 そうした中で、第3回で取り上げたBPSDのように、症状の強弱、あるいは症状が出現するか、という点まで、本人の性格や生活の変化、取り巻く人の言動によって大きな影響を受けており、この面での非薬物療法の役割が期待されます。 具体的には、 ①日中の活動性の向上と1日を通して時間的なリズムを保つこと ②感情・情動の安定効果 ③コミュニケーション能力の維持・向上 ④自発性・意欲・自主性の改善 ⑤周囲の人々の理解力の促進 といったことを目標としていることになります。 現在使われている4種類の認知症治療薬は、いずれも症状の進行を遅らせたり、一時的に軽くする、という効能のため、こうした療法が重要な鍵を握っているといえます。 次回ではそれぞれの方法について解説します。 【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】 [執筆者] 中島孝之 [プロフィール] 1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。