第8回も前回に続き、認知症の「薬剤以外による療法」をとりあげます。今回は、感情に焦点を当てた「回想療法」と「バリデーション療法」…
非薬物療法にはどんなものがある? その2
前回は、認知機能療法としてリアリティオリエンテーション、刺激療法としてアロマテラピーや絵画療法について紹介しました。今回は感情に焦点を当てた療法を紹介します。
③回想療法
この方法は認知症の方でも比較的良く保たれている「昔の記憶」を利用して、これを思い出すことでその人らしさを支え、心身の健康を促進することを目的としています。
具体的には個人的な回想法とグループ回想法に分けられ、それぞれ人生回顧(人生を振り返る)と一般的回顧(社会の出来事を振り返る:戦争、歌謡曲、町の様子など)について話し合います。
スタッフのなじみやすさなどから8~10回くらいを1クールとして、より良い生活への支援を目的として行います。古い映画やビデオなども発売されており、こうしたものの利用も有効だと考えられます。
④バリデーション療法
バリデーションは「確認」と訳されますが、実際には認知症の方の感覚を全て受け入れる(受容する)ことが基本です。
言葉の一つひとつを繰り返しながら会話を続けることで、ご本人の精神的な安定を保って感情のコントロールをすることになります。
例えば「財布を盗まれた」に対して「そう、お財布を盗まれちゃったの。それは大変ね。お困りでしょう。」と言葉を返します。この際、「そんなことないでしょう。きっとどこかに置いてあるのを忘れてるんでしょ。」と拒否したり叱るような言葉は、不安や恐れを心の中に残すことになるので使わないようにします。心の平静を保つことで行動や理解について改善をする、というものです。
【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】
[執筆者]
中島孝之
[プロフィール]
1943年生まれ。関西医科大学卒業同大学院修了。医学博士、脳神経外科専門医。1990年大和郡山にて中島医院開業。奈良県立盲学校校医・非常勤講師。元大和郡山市医師会会長。1998年大和郡山市介護保険要介護認定モデル事業委員長、同市要介護認定審査委員。奈良介護保険研究会世話人。