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スポーツの語源は「気晴らし」、「憂いを引き離し心をなごませるもの」。本を読んだ後は、からだを動かす喜びに身を委ねよう!

ころがるボールと本の旅

ああ、やだやだ、2020年東京五輪の競技場やエンブレムの騒ぎ。スポーツは、しょせん国家の道具? ところが、政治とスポーツの関係を憂いた本は昔からあったようです。1938年、オランダの歴史家・ホイジンガさんは、スポーツ史に必ず登場する名著『ホモ・ルーデンス(≒遊ぶ人)』の中で「スポーツなんて、もう遊びの要素が無くなっちゃって、これじゃ文化の退廃だよ」ってな具合に残念そうに執筆。これは、ナチス政権下で開催されたベルリン・オリンピックがあった直後のことでした。

さて、ここで、話題をインターセプト。近代球技の起源はイギリスと言われています。フットボール、テニス、ゴルフ、、、。ところが、元々は、ヨーロッパ各国では、個性的なルールに基づいたバラエティ豊かな球技が盛んだったそうなんです。『球技の誕生』は、奈良高専教授の手による執筆。中世のユル〜い絵画など図版が豊富で楽しい1冊。

じゃあ、奈良の伝統球技といえばー。桜井の談山神社けまり祭が思い浮かびます。ところが奈良時代に行われていたのは、蹴鞠じゃなくって打鞠。打鞠とは、馬に乗ってゴルフみたいなのをする、ポロ(ラルフローレンですね)。なるほど、こちらの方が古代の奈良っぽい。今の蹴鞠は、明治天皇の勅命により設立された保存会によるものとのことで、なるほど、ここにも権力が・・・。
球技をする“心”って、なんだろう?『生きるためのサッカー』は、日系ブラジル人のネルソン松原さんの文化人類学的半生記。手づくりボールで遊びながら育ったネルソンさんは、紆余曲折を経て、今は神戸でシニアやコーチへの指導をされています。小豆島のちいさな出版社の、気持ちのこもった1冊。

そもそも、スポーツの語源は「気晴らし」。「憂いを引き離し心をなごませるもの」。ならば、見るよりも、するスポーツへ。本を読んだ後は、からだを動かす喜びに身を委ねようじゃないか、と中年女子(40代っす!)は心に誓うのでした。

【この原稿は、奈良の地域マガジン『さとびごころ』http://satobigokoro.org/から提供いただき再掲したものです。】

ホモ・ルーデンス ホイジンガ/著 中公文庫

球技の誕生 (副題 人はなぜスポーツをするのか) 松井良明/著 平凡社

日本の蹴鞠 池修/著 光村推古書院

生きるためのサッカー ネルソン松原/著 サウダージ・ブックス

[執筆者]
嶋田貴子

[プロフィール]
2002年より奈良暮らし。図書館司書を経て、奈良の地域マガジン『さとびごころ』の編集&執筆に携わる。 あちこち出かけて、見たり、知ったり、食べたりすることが好き。そして、志のある人に出会って、お話を伺うのも大好き