4年にわたってつづいた往復書簡も最終章に。往復書簡は終了しても、「ケアの文化」をつくる仲間として今後もつながりは続きます。
北海道の中村さんへ
奈良の森口です。
年々暑くなる夏の北海道から、「夏の乗り切り方を教えてください」というのが、中村さんからの前回のメッセージでした。夏もとうに過ぎ、今年は本当に寒い冬です。北海道も雪の多い冬でしょうか。
季節を話題にしたやりとりが、こんなふうにずいぶんタイミングがはずれてしまうようになりましたが、それでもこうして季節の移ろいに気持ちを向け、北海道の気候に思いを馳せる時間をもてるのは、この往復書簡のおかげと感じます。
さて、その往復書簡ですが、スタートしてからちょうど4年たち、中村さんとも相談のうえ今年度末でいったん終了ということになりました。次の中村さんからのお返事で最後となります。
この往復書簡は、たんぽぽの家「ケアする人のケアプロジェクト」の一環としてHELP ON HELPのサイトを立ち上げた時にスタートしました。ちょうどそのころ、たんぽぽの家をすでに辞めていた私に、「ケアする人のケアプロジェクト」がスタートした2000年ごろにお付き合いのあった中村さんが、久しぶりにメールで連絡をくださったのでした。
【夏の京都府立大学キャンパス/ほどよく手入れされた自然が心地いい】
そこで、中村さんとプロジェクトの立ち上げ当時を振り返るやりとりをすることが、プロジェクトの理念を含めた記録を残すことになると考えました。中村さんに往復書簡という形をご提案したところ快諾していただき、これまでおつきあいいただきました。本当にありがとうございます。
往復書簡では、プロジェクトのスタート当初の振り返りから、現在のそれぞれの活動の話まで、トピックとしてはさまざまでしたが、テーマは一貫して「ケア」のこと、そして「ケアする人のケア」のことだったと思います。
私たちは常に誰かをケアしながら、また誰かにケアされながら生きています。そして、中村さんが言葉にしてくださったように「ケアする人が、癒され、支持され、力を発揮できる」ことで、「ケアの文化」を作っていくのだと思います。コラムで話題になった、セルフケアやグリーフケア、サードプレイスや居場所などは、こうした文化につながるトピックだったと思います。
【秋の京都府立大学キャンパス/色とりどりの紅葉は期待以上!】
さて、私のほうは、2年ほど前に「ケアの文化研究所」というのをつくりました。
http://caringsociety.net/lab/
「ケアする人のケアプロジェクト」を私の後任として担った佐賀優里香さんがたんぽぽの家を辞めるとき、「運動としてケアする人のケアをやっていこう」ということになったのです。
「ケアする人のケア研究所」でも良かったのですが、もう少し違う活動もしていく可能性があると考え、ずいぶん迷って「ケアの文化」のほうを使うことにしました。その後、インクルーシブリサーチという実践的な研究活動をするうえでこの研究所をベースにすることになったので「ケアの文化研究所」にしておいて正解でした。
当面は「ケアする人のケア」と「インクルーシブリサーチ」の情報を発信していきたいと考えています。
考えてみれば、往復書簡というのはずいぶん旧式なやりとりですよね。今はフェイスブックなどSNSで、懐かしい友達とも新しい友達とも、写真を含めたたくさんの情報をオンタイムで共有できます。そのぶん最近では、手紙のやりとりは言わずもがな、携帯メールのやりとりさえも私はずいぶん減りました。
「記録を残す」というミッションを果たすためには、ひと手間かかる往復書簡という形が良かったと思いますが、今後はぜひSNSをうまく活用しながら、大事なことを言葉にして発信していきたいと思います。中村さんとも引き続き、共に「ケアの文化」をめざしていきたいと思います。
中村さんとのコミュニケーションの形は変わりますが、今後も引き続きどうぞよろしくお願いします。
森口弘美