幼い頃から野外活動に参加し、学生時代、社会人になってからもスキーや登山などの野外活動を通じて、子どもたちと多く関わってきた。その…
渡邉文子さん(以下、渡邉さん)は、特定非営利活動法人SOWERS(代表:村上弘)の発起人兼副代表理事である。特定非営利活動法人SOWERS(以下、SOWERS)は、学童保育をメイン事業とする、今、注目の法人である。渡邉さんは、大学卒業後、児童に関わる公益財団法人にて職員として3年間の経験を積んだ。そして、この2018年4月より学生時代に出会った仲間とSOWERSで事業を始めた。そんな渡邊さんに「ケア×野外活動」について聞いた。
・できたという経験
様々な子どもたちに寄り添うためには、感動するポイントや面白いと思えるポイント、挑戦できるポイントを自分で経験し、把握していることが、ケアの際に役立つ。小学生の頃から高校まで公益財団法人が行う野外活動のプログラムに参加していた。大学でも子どもたちに関わるボランティアリーダーとして、また、社会人になっても、子どもたちや大学生をまとめる職員として、幅広い世代の子どもたちとスキーや登山、キャンプなどの野外活動を通じて関わった。子どもたちへのケアにおいて、自身のスキーや登山の経験、また、それらの指導経験が大きな影響を与えている。また、子どもたちのケアの中で大切にしていることは、「子どもが何を考えているかを考えること」である。子どもたちのすべての行動には理由があり、それを踏まえて関わることで、子どもたちに寄り添えるのではないかと考えている。
・多様な子どもたちとの関わり
子どもたちは、本当に多様である。様々なバックグラウンドがあり、無邪気に楽しそうに見えても、実はその子にしか分からない小さな壁にぶつかっていることも少なくない。そのような子どもたちに学校とは違った居場所を与えたい、作りたいと感じ、現在の活動に繋がっている。どんな環境下にいる子どもたちでも、自分を認めてもらえるような、そして自分自身を発揮できるような居場所づくりに取り組んでいる。そして、少しでも自分に自信をつけて、社会に出て行ってくれることを望んでいる。
・子どもたちへの教育
学校での勉強はもちろん重要である。しかし、学校の外でのさまざまな体験や経験の重要性を改めて見直す必要がある。豊富な、そして多様な体験の機会や地域の人との関わりなどが、今の子どもたちに必要ではないか。あまりにも徹底した安心・安全な街づくりは、子どもたちの体験や経験の機会を減らしてしまっていると危惧する。また、子どもたちが塾や習い事に追われすぎてしまい、自由を失うことへの危険性も感じている。しかし、家庭によって教育や子育ての方針、捉え方は異なるだろう。それを踏まえた上で、どんな家庭に対しても、柔軟な相談や支援を行っていきたい。
・地域性を活かしたこれからの取り組み
after school ミライブラリは、学校ではできないような新たな体験や経験を積める場所であり、子どもたちからでてくる多様なアイディアに少しでも応えられるような空間でありたい。SOWERSの周辺には、西陣織の職人さんをはじめ、様々な職や趣味をもった大人たちがいる。そんな大人たちと子どもが出会える場所を作っていきたい。子どもたちが幅広い世代の多様な大人たちと繋がっていけばと願う。
・ケアに関わる学生へのメッセージ
「しなやかに生きて欲しい」ということ。人と関わる中で、多様なニーズがあり、難しさを感じることもあるだろう。ぜひそんな時は柔軟に考えて、人と関わってみてはどうだろうか。また、「人を輝かせること」もケアに関わる人にとって大切だと考える。人がキラッと輝く瞬間を見逃さないことが大切である。
団体名: 特定非営利活動法人 SOWERS 『after school ミライブラリ』
郵便番号・住所: 〒602-0092 京都府京都市上京区大宮通寺之内上る三丁目北仲之町520番地1
電話番号: 075-406-5889
メールアドレス: info@sowers-npo.org
[執筆者]
松田寛史
[執筆者の情報]
関西学院大学人間福祉研究科兼国連外交コース博士前期1年。ストリートチルドレンや難民の子どもたちに関心を持つ。「元ストリートチルドレンへのケアの実際と可能性—フィリピンの児童養護施設カンルンガンを追ってー」を卒業論文として執筆。